お産の歴史
|
|
本書は、縄文時代から現代にいたる、日本5000年の出産の歴史をたどる医学史です。縄文時代の遺跡から見付かった、出産土偶と呼ばれる当時の文化をもとに、当時の出産に対する捉え方や出産の様子を考察するところから、本書お産の歴史はスタートします。
第3章では、日本初の医事法令である「医疾令」をとりあげつつ、仏教伝来の事実を絡めながら当時の事情を省みます。第5章の鎌倉時代では、「餓鬼草紙」などの絵巻物に表現されている出産関連の部分を、文化史的に貴重な情報として取り扱い、口絵と共にその様子を解説しています。
興味深いのは、第7章からの「産科習俗」に関する内容です。産忌と呼ばれるタブー観、不浄の文化や、産婆を選ぶ基準など、医学の発達を未だ見ない時代の事情を知ることが出来ます。
江戸時代以降は、いわゆる蘭学の流入に伴い、ここに近代産科の基礎が築き上げられていったことが伺えます。人間の出産、言い換えれば二足歩行動物の出産においては避けられない難産に対し、当時の人々がどのような具体策をもって対応していたのかを、数々の特殊な鉗子を紹介しつつ、明らかにして行きます。
本書は、近代産科医学に至る日本のお産の歴史を、新書サイズにコンパクトにまとめられており、文化史としてとても興味深いものになっています。