文化としての生殖技術―不妊治療にたずさわる医師の語り
|
|
本書は、不妊治療を題材として、生殖医療技術の開発や臨床応用を担う人々、つまり産婦人科医が、いかなる論理によって、技術を社会に定着させてきたのかを検討しています。さらには、生命全般に関する技術が次々と開発されて行く時代において、私たちはそれらの技術についていかに考え、それにどう対処するべきかの手掛かりを見つけようとしています。
本書を読むと、医師へのインタビューの内容を通じて、そこに倫理的な葛藤や割り切りの存在、また、技術としての有用性と“有用性そのもの”が自然なものか不自然なものか、といった、非常に倫理的なそして個人の価値観とのせめぎあいとでも言うものを見ることが出来ます。
また、不妊というものを「症状」として、また「機能の低下」として捉えることの意味と、それぞれにおける“医師の取り組み態度”の差異といったものも浮かび上がってきます。これらに留まらず、本書では医師の多種多様な発言を取り上げ、そこから医療の素顔を描き出そうとしており、非常な労作という感があります。
テーマは専門的ですが、一般の人もそこから十分に意図を読み取れるものですので、不妊治療に疑問をお持ちの人は一読されることをおすすめします。医師の生の声、ひとりの人としての声を知ることが出来る、貴重なものです。